『テーマ・月の花』 2007/7/28





「あそこに窪地があるだろう」
 遥かな眼下、彼が指差す先に他の草花とは色の違
う一帯があった。
「満月の晩にだけあそこには紫の花が咲き乱れるん
だ」
「紫の?」
「そう。その花は死者を呼び戻すという言い伝えが
あると、昔、祖母から聞いたことがある」
「不思議な花……」
 風が私たちにぶつかってくる。わたしは彼の裾を
掴んで離さないようにした。
「必ず帰ってくるから、そしたら、結婚しよう」
「はい……」
 その日、初めてのキスをして、彼は戦地へ赴き、
死んでしまった。

 満月。紫の花が咲き乱れる夜。
「やぁ、ひと月ぶりだね」
「えぇ……お帰りなさい」
 わたしは月に一度、ここで彼に会うことができる。
 もしかしたらあの日、彼は死を予感していたのか
もしれない。
 だからわたしにあの話をしたのでないか。
 そう話してみると、彼は笑いながら言った。
「今日は君を迎えに来たんだ。さぁ一緒に行こう。
ウェディングドレスを着た君を、僕に見せておくれ」
 私は幸せを噛み締めながら、月へと続く紫の花の
階段を登っていった。

「あぁっ!? あぁ、あの女か。恋人が死んでから、
日に日にブツブツ言うようになってよ。先月、麻薬
中毒で死んじまったよ」
「恋人も軍を脱走して処刑されたらしいからな。今
頃、おちこぼれ通しあの世で仲良くやってんじゃな
いか? はははっ」









 了


<寸評>


>ss30233.txt
紫の花ってケシの花かよw
このオチはないわ

>紫の花の画像をお題に一筆書いてみた
途中まで良い話だったのに、
最後のアメリカンジョークみたいなオチで吹いた
清涼院のパーフェクトワールドじゃないが
一人称小説でああいう挟み方は感心できないな

無念 Name としあき 07/07/08(日)01:59:50 No.47748739   
>ss30233.txt

恋ってのは実に報われないものだね
でもオチの2行が品がなさ過ぎたかな
ヤク中はいいとしても脱走の設定はいらなかったような

無念 Name としあき 07/07/08(日)02:01:46 No.47748938   
>ss30233.txt
意表をつくオチだったけど、
ある意味安易に落としすぎというか。
バッドエンドが好きじゃないから、そのせいもあるけど。
どうせならキラキラした終わりにして欲しかったよ。

無念 Name としあき 07/07/08(日)02:02:56 No.47749076   
>ss30233.txt
こういう悪趣味なオチが大好きな俺マジ変態

無念 Name としあき 07/07/08(日)02:04:14 No.47749225   
>ss30233.txt
最後の二行を聞いてる人が誰なんだろうと少し考え
初めの「彼」だと思いついて鳥肌たった
作者の意図はどうか知らんが

無念 Name としあき 07/07/08(日)02:06:05 No.47749409   
>ss30233.txt

満月の夜に紫の花の中で踊る美しい少女を見つける主人公
→彼女に会いたくて満月の夜に通いつめる
→実は紫の花は麻薬の花、少女は幻覚
→花畑で麻薬中毒で見つかる少年の死体、それを笑い話と
して話すオッサン?二人

この流れのほうが面白いんじゃないかな?とオレは思った

無念 Name としあき 07/07/08(日)02:14:42 No.47750356   
遅レスすまん
>ss30233.txt
さらっと読むには面白いと思ったが、
お題をふと振り返るとなんともギャップに笑えた。
オチも別段ブラックとは感じられなかったが誤字?が
あったのがちょっと。(同士)
こうして他人の感想も見るといろいろな考えや趣味や
捉え方があって面白いね。


 







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