『テーマ・夜中三時』 2007/6/9


<1>


「魔法とは奇跡なんでしょうか?」
 私はストーブに火を灯す想い人を見ながら訪ねた。
「そうだな……」
 ボッと暗い室内に、柔らかな暖光が滲む。
 私は膝を抱えながら椅子に座り、ストーブを見る。
「わたしの考えだが、魔法と奇跡は違う」
 彼が私の横に座る。
 パチパチと炭の爆ぜる音。
 揺らめいて踊る彼と私の影。
 二人きりの。
「奇跡とは……不遜な言い様だが、勝手に起きるもの
だ」
 私はストーブから彼の唇に注視した。彼はじっとス
トーブを見つめている。
「では……魔法とは?」
「自ら起こす大逆転、そんなものかな」
 彼は自嘲するように笑った。
「自ら……」
「私には魔法を使えないようだ」
 そのとき、彼が私の手を強く握り締めた。
 強く強く、痛いぐらいに。
「どうしても……行ってしまわれるのですか……」
「あぁ……それこそ奇跡でも起きない限りは……私が
こちらに留まる理由がないのだ」
 私は胸がどうしようもなく痛くなった。
 この手を離したくなかった。
 離れたくなかった。
 私は動悸が激しくなり、息遣いも危うくなって、と
うとう彼の胸に顔を埋めてむせび泣いてしまった。
 優しく抱き寄せてくれる彼の胸板。熱い鼓動。
 私達は互いの瞳に己が哀れを見た。 
「奇跡が……」
「ん……?」
 奇跡が起きないのなら、私が魔法を口ずさもう……
「……小早川大尉殿……愛しておりました……」



 了


<寸評>


>[f265346.txt]
やるなぁ…
すごい完成度


>もう寝るね
おいおいガッカリだぜー
真面目に書けよーぅ

>f265346.txt
畜生!やられた

>[f265346.txt]
急に大尉殿はちょっと萎えた


>急に大尉殿はちょっと萎えた
二次裏でのさらさらなら大尉殿でイナフ
他所でなら男女という設定で。
 







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